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株式会社HIKARUのブログ担当 コーキン・グーちゃんです。
防水工事やリフォームについてわかりやすく書けるように勉強中です!
今回の内容:【シート防水】とは
合成高分子系シート防水といわれる、高分子の素材でできているシート状の防水層のことを「シート防水」と言います。
シート防水の種類には次のようなものが挙げられます。
◎塩化ビニル樹脂系シート防水
◎合成ゴム系シート防水⇒加硫ゴム系シート防水⇒非加硫ゴム系シート防水
◎エチレン酢酸ビニル系シート防水
◎熱可塑性エラストマー系シート防水
それぞれのシート防水の特長もこの記事で紹介していきます。
今回はシート防水を解説していくパート4の記事になります。
防水工事の知識とウレタン防水、FRP防水については別の記事で解説しております。
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シート防水の特長
シート防水は工場で均一品質で製造されているため、ウレタン塗膜防水などの液体を塗って形成する防水層とは違い、防水層の厚みが一定であり、またシート単体で防水層を形成できる(単層防水)ため比較的容易に施工をすることができます。
加えてシート防水はかぶせ工法による改修工事が可能であることから、廃材が出ないため、産廃費用の削減や工期短縮ができ環境に優しいのが特長です。
デメリットとしては、規格のある複数枚のシートを張り合わせて一つの防水層を形成するため、つなぎ目ができてしまいシームレスな仕上がりにはならないことです。
また、つなぎ目の処理がきちんと行われていないと、そこから雨水などがシート防水の内側に入り込んでしまいます。
屋上に貯水タンクや室外機が多く設置されていたりすると、複雑な形状に合わせてシートを切らなければならず、シートのつなぎ目も多くなりますので、雨漏りのリスクが高くなることや、作業の複雑さなど注意が必要です。
しかし安定的な防水性能と高い耐久性、施工性をもっているため様々な工事にシート防水は使われています。
シート防水の主な工法
シート防水は主に接着剤で貼りつける密着工法(接着工法)、金具で固定する機械的固定工法で施工されます。
アスファルト防水とは違い、火気を使用せず、シート同士のつなぎ目は溶剤接着や熱風融着などで貼り合わせます。
密着工法とは
密着工法は下地に完全に接着剤で貼りつけるため耐風圧性に優れており強風による巻き上げなどが起こりにくく、強度があり軽歩行が可能です。
下地の状態に左右されやすく、施工の際はよく乾燥させなければなりません。下地が湿潤状態であると、水蒸気が下地とシートの間で発生し膨れの原因になります。
機械的固定工法とは
機械的固定工法は下地と防水層が全て接地せず、部分的に固定金具によって防水層を固定する工法です。
シート防水工事では比較的機械的固定工法が使われる場合が多いです。
下地が湿気を多く含んでいる場合、密着工法では防水シートの膨れが発生する可能性がありますが、機械的固定工法であれば湿気の他、ひび割れなど下地の影響を受けにい防水層になります。
また下地調整が軽微なもので済むため、工期短縮にもなる工法です。
デメリットとしては下地にディスク面だけしか固定されていないため、台風のような強風が吹くとまくれ上がり剥がれてしまう場合があることです。
地域によっては機械的固定工法は採用できない場合があります。
下地の強度が必要なため、樹脂アンカーやビスの引抜試験を行い施工が可能か確認しなければなりません。
下地に凹凸があると水たまりができてしまうため、平滑に補修する必要があります。
また金具を使うため、シートできちんとカバーされていないと錆などが発生する場合があります。
脱気工法
防水シートが下地から蒸発した水分で膨れが発生するのを防ぐために脱気工法が使われます。
通気テープを下地と防水層の間に一定間隔になるように設け、脱気筒から水蒸気を逃がす方法や、下地コンクリートの表面に通気シートを敷き脱気筒から水蒸気を逃がす方法などがあります。
防水シートに通気層が積層されている物もあります。
脱気工法が採用される下地としては次のような場合が挙げられます。
①デッキプレート型枠コンクリート下地
②断熱材打ち込み下地
③改修工事におけるコンクリート保護層下地
④寒冷地などで乾燥が不十分な下地
他にも断熱材を積層する断熱工法や、保護材を設置する工法などがあります。
費用などは断熱工法や保護層を設けるかによって変動がありますが、接着工法に比べ機械的固定工法の方が価格が高くなります。
かぶせ工法と撤去工法
かぶせ工法について
改修工法には撤去工法とかぶせ工法があり、1回目の改修工事ではかぶせ工法を採用することが多いです。
シート防水はかぶせ工法でよく使われていますので、簡単にどんな工法なのか説明したいと思います。
かぶせ工法のメリットは既存の防水を撤去せずにそのまま上から新しい防水層を設けるので、撤去の労力や費用の削減、産廃処分費用の削減につながることです。
主にシート防水において機械固定工法はかぶせ工法としてよく使用されています。
また既存の防水層をそのまま利用でき防水層が2重になるため耐久性があり、撤去の工程の際の建物への負担も軽減できます。
万が一施工中に雨が降って来ても下地に影響せず、雨漏りのリスクが低くなります。
デメリットとしてはどんな防水材でもかぶせ工法ができるわけではないという事です。防水材同士の相性や下地の状態が悪い場合、防水効果は長続きしません。
耐震性の関係で何度もかぶせ工法はできないため、2~3回目の改修工事は撤去工法を行うなどメンテナンスなどで防水層を長持ちさせる必要があります。
撤去工法について
撤去工法は撤去や下地調整などの工程が重要になってくるため、工期が比較的長くなってしまったり、費用も高くなってしまいます。
しかし撤去工法であれば選択できる防水材が多くなり、新規防水層の為高い防水効果を得ることができます。
下地のひび割れなどが起こっていた場合目視で確認ができ、補修を行うことができます。
雨漏りが起こっているようなところには、撤去工法で工事をすることが望ましいです。
シート防水の劣化症状
シート防水の劣化症状には次のようなものが挙げられます。
①膨れ
シート防水の膨れは、下地から発生した水蒸気によるものです。
シート防水を設置する際に下地が湿っていた場合など、防水工事ではよく見られる現象です。
建物の環境により機械固定工法や脱気工法を採用することで膨れを防止できます。
もし膨れが起こってしまっても雨漏りが起こることはありません。しかし膨れ自体は、衝撃などが加わることで破れやすい状態であると言えますので、設置から10年以上経過している場合は業者に点検を依頼すると良いでしょう。
②破れ、破損
飛来物による衝撃により防水層が破れてしまったり、鳥害によるカラスやカモメなどがシートをついばみ穴を開けてしまったりすることが原因となる場合や、経年劣化により硬くなった防水層を長期間メンテナンスを行わず放置してしまった場合などが考えられます。
またシート防水の厚みは材料によって異なりますが1.0~2.5mmと薄い為、表面保護されていない場合、軽歩行程度の摩擦や重量にしか耐えられません。
物を落としたりすると簡単にキズが付いてしまいますので、気をつけましょう。
下地が見えている状態であればそこから雨漏りが起こる可能性があります。
③剥がれ
経年劣化による接着力の低下や、温度変化や建物の揺れの影響により伸縮を繰り返し行うことで剥がれてしまう場合があります。
どのシート防水でも10年以上の耐久性はありますが、周辺環境や気候によりシートへの影響は異なってきます。
どの劣化症状でも放置することは良くありません。10年に一度点検を業者に依頼することが望ましいです。
シート防水の種類と特長
ここからはシート防水の種類について解説していきたいと思います。
塩化ビニル樹脂系シート防水とは
塩化ビニル樹脂系シート防水とは、ポリ塩化ビニル樹脂(PVC)が主原料のシート防水です。
ポリ塩化ビニル樹脂(PVC)とはプラスチックの一種で、加工しやすい素材の為様々な建築資材や部品の原料となっています。
耐薬品性、耐候性、耐食性、難燃性、電気絶縁性、加工性など優れた特徴を持ち合わせています。
その反面、ポリ塩化ビニル樹脂自体の耐熱性は低く80℃を超えると変形したり衝撃が加わると破損しやすい特徴もあります。
塩化ビニル樹脂層のみの均質シートや、塩化ビニル樹脂層と繊維補強した層や基布を積層した複合シートがあります。
着色しやすい素材の為、カラーバリエーションも豊富です。
シート防水工法の中では塩化ビニル樹脂系シート防水が主流であり、屋上や陸屋根、バルコニーなど様々場所の防水工事で使われています。
塩化ビニル樹脂系シート防水のメリット・デメリット
◎単層の防水であるため、工程が少なく、短い工期で施工が可能です。
接着工法の場合・・・①下地の検査・清掃、②下地処理(不要の場合もある)③接着剤塗布、④塩ビシート貼り付け
機械的固定工法の場合・・・①下地の検査・清掃・下地処理、②絶縁シートの貼り付け、③金具の取付、④塩ビシートの貼り付け
◎かぶせ工法の場合は、既存の防水層は撤去する必要はありません。
◎耐摩耗性、耐圧縮性に優れます。密着工法であれば、軽歩行が可能です。
◎耐候性・耐水性に優れる・・・トップコートを塗らなくても耐久性に優れています。
◎鳥害を受けません。(鳥害とはカラスやカモメなどが防水シートをついばみ、破けたりすること。ゴムシート防水においてよく見られます。)
◎自己消火性があるため、延焼しにくいのも特徴です。
塩ビシートのデメリット
デメリットとしては紫外線による劣化で硬化することが挙げられます。
耐久性に優れ15年前後耐用年数があるといわれていますが、塩ビシートには可塑剤(かそざい)といわれる塩化ビニル樹脂を柔らかくする素材が添加してあり、可塑剤は紫外線に長年当たり続けることでだんだんと抜けてしまいます。
可塑剤が抜けてしまうことで塩ビシートは硬化してしまいますので、10年程度で一度改修が必要かどうか点検を依頼すると良いでしょう。
破れていたり下地が見えていなければ様子を見ても大丈夫です。もし気になるようであればトップコートの塗り替えを依頼しましょう。
※トップコートの塗り替えは5~10年が目安とされています。
合成ゴム系シート防水とは
合成ゴムシート防水には2種類あり、加硫ゴム系シート防水と非加硫ゴム系シート防水があります。
シート防水の特徴にゴムの柔軟性と耐久性、下地への追従性を兼ね備えたシート防水です。
加硫ゴムシート防水とは
加硫ゴム系シート防水とは、合成ゴム(EPDM、IIR)に補強材(カーボンブラックなど)、軟化剤、加硫材、加硫促進剤などを加えて混練し、押出機又はカレンダーロールでシート状に成型した後、加硫缶やロートキュアーで加熱処理して製造したシートのことです。
※加硫缶・・・加圧上気熱によりゴム製品を加硫する装置です。加熱により硫黄で繋ぎゴムの性質を変えます。強度増大、温度変化による弾性の減少を防止、溶剤に対する抵抗性を増大させます。
ゴム層のみ、ゴム層+粘着層やカラー層が付いた均質シートや、基布や断熱材を積層した複合シートなど様々な種類があります。
均質シートは密着工法で施工されますが、複合シートであれば機械固定工法も可能です。
加硫ゴムシート防水同士のつなぎ目はテープ状シール材と接着剤で張り合わせた後ローラーで転圧します。
加硫ゴムシート防水の特長
柔軟性や下地の亀裂やひび割れに対する追従性に優れ、繰り返し伸縮性・引張強さを発揮します。
主成分である合成ゴム(EPDM、IR)は耐久性に優れ、低温や高温の幅広い温度域に対しても耐久性があります。
紫外線に強いことも特長です。
そのため加硫ゴム系防水シートを使用すると耐候性に優れた防水層になります。
軽量で施工のしやすさも兼ね備えており、保護塗料のカラーバリエーションにより意匠性を高めることもできます。
非加硫ゴム系シート防水とは
非加硫ゴムシートは非加硫ゴムの特徴をもったシート防水のことをいいます。
原料ゴム(IIR、再生IIR)に補強材、廊下防止剤などを加えて混練し、押出機又はカレンダーロールでシート状に形成した後、熟成槽で歪取り処理をし、非加硫ゴムシートが作られます。
非加硫ゴムは硫黄で架橋していないので元の形状に戻る性質がない為、一度変形すると形状が変化しないのが特長です。
柔軟性に優れ複雑な形状や凹凸の下地に馴染みやすく、浮きや接合部のズレなどが発生しにくいので、出隅・入隅・ドレン廻りなどの増貼りに多く使用されます。
非加硫ゴムシート防水の相互の接着接合性がよく、プライマーを用いて重ね張りをすれば科学的に一体化します。
特長を生かした工法として、瓦棒屋根改修工法や地下先やり防水工法などがあります。
熱可塑性エラストマー(TPE)シート防水とは
熱可塑性エラストマー(Thermo Plastic Elastomer、TPE)という熱可塑性樹脂の一つです。
ポリプロピレンやポリエチレンなどのオレフィン系樹脂を主成分とし環境汚染や人体の影響が少ない環境対応型の材料でできています。
熱可塑性ゴムシートともいわれます。プラスチックとゴムの間のような存在です。
エラストマーとは一般的にゴムと同じ意味ですが、生ゴム(原料ゴム)とエラストマー(弾力ゴム)と区別されています。
原料の状態では弾力があまりないゴムですが、硬化させ弾力を持つ状態になったもののことをエラストマーといいます。
熱可塑性エラストマーは熱を加えると軟化し、冷やせばゴム状に戻る素材です。
※加硫ゴムは言い換えると熱硬化性エラストマーと言います。
熱を加えても軟化せず、耐熱性に優れています。一般的にゴムというと熱硬化性エラストマーを指します。
熱可塑性エラストマー層だけの均質シートと、シートの間に基布を積層した複合シートがあり、複合シートは寸法安定性に優れます。
米国などでは屋根シート防水材として主流な熱可塑性エラストマー系防水でありますが、比較的新しい防水です。
日本では2000年頃から採用され始め、リサイクルが容易にでき環境に優しい防水工法として注目されています。
現在では屋根防火試験にも合格し、防火地域における耐火構造屋根(RC構造、ALC構造など)に使用することが可能となりました。
加硫ゴムシート防水と比べると軽くコストも安い為、改修工事にも負担を軽減できることが見込まれます。
デメリットとしては工事実績が少ないことや、耐久性・耐熱性が比較的に低いことが挙げられます。
工法は機械固定工法を使い、自走式融着機でシート同士を一体化させます。
用途
工場や公共施設などの屋根や屋上。
三晃金属工業㈱がハイタフEGという熱可塑性エラストマーシートの上から太陽光パネルを設置する工法を提案しています。
その他、土木工事など廃棄物埋立処分場や溜池、雨水貯留システムやゴルフ場など遮水シートとして。
エチレン酢酸ビニル系シート防水とは
エチレン酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)をシート状に成型した後、表面に細かな起毛を施し、セメントや反応硬化型接着剤などと馴染むように作られています。
エチレン酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)はとても軽く、柔軟性、弾力性に優れていることから、主に緩衝材として使用されています。
水への耐性や紫外線による劣化が起こりにくいのも特長です。
エチレン酢酸ビニル樹脂系シート防水の施工方法
エチレン酢酸ビニル系シート防水は樹脂シートの両面に特殊繊維を植毛することでセメントで張り付けられるという特性を持っています。
下地に接着剤としてセメントペーストを充填してからエチレン酢酸ビニル系シート防水を張り付けることで、いわゆる湿式工法で複合防水層を形成します。
セメント系接着剤ですので、下地が湿っていても施工が可能です。シートの起毛にセメントペーストが浸透することで強い接着力が生まれます。
火気や溶剤を使わず施工できるので安全で嫌な臭いもしません。
耐久性に優れるため、様々な保護材を設置することができ、ラス網無しでもシートに直にモルタル仕上げやタイル仕上げをすることができます。
下地とシート間の水密性が高い為、端末部のシーリングや押え金物は不要です。
また既存タイルや既存押えコンクリートの上からかぶせ工法ができ、改修がしやすいのも特徴です。
用途
地下の防水工事だけでなく、陸屋根やバルコニー、屋上駐車場や厨房、トイレなど水回りの防水工事にも使われています。
シート防水の比較
シートの種類 |
塩化ビニル樹脂系 |
加硫ゴム系 |
非加硫ゴム系 |
熱可塑性エラストマー系 |
エチレン酢酸ビニル系 |
---|---|---|---|---|---|
耐用年数 | 10~20年 | 10年~15年 | 10年~15年 |
10年~25年
|
30年以上 |
施工日数 | 1~4日 | 1~4日 | 1~4日 | 1~4日 | 3~5日 |
特長 ・主な工法 ・トップコート ・軽歩行の可否
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基本的にトップコート不要(塗布する場合もある) 密着工法であれば軽歩行が可能(頻繁に歩行する場合は歩行用仕上げが必要)
密着工法 機械的固定工法
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トップコートなど表面の保護が必要 原則非歩行(歩行用仕上げが必要) 密着工法 機械的固定工法 |
トップコートなどの表面の保護が必要 原則非歩行(歩行用仕上げが必要) 密着工法
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トップコート不要 軽歩行接着工法が可能
密着工法 機械的固定工法
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トップコート不要 モルタルや仕上げ塗料など 保護層を設けることにより歩行が可能
接着工法 セメントペーストで張り付ける(湿式工法ともいう) |
耐用年数、施工日数はあくまでも目安です。参考までにご覧ください。
まとめ
シート防水は工場で作られた防水機能を持ったシートです。均一な厚みのシートですので、塗ムラなどが起きず、施工のしやすさからよく使われる防水材という事がわかりました。
現在では塩ビシート防水やゴムシート防水が主流となっておりますが、熱可塑性エラストマー系防水シートやエチレン酢酸ビニル系シート防水など用途に合わせた新しい防水シートも取り入れ始められております。
改修工事で採用されるかぶせ工法はシート防水の一番のメリットと言えます。費用削減につながるほか、工期短縮や環境にも優しい工法ですので知っておくと良いでしょう。
もし建物のシート防水が劣化している、雨漏りが起きているなどがございましたら 株式会社HIKARUまでお気軽にお問い合わせください。
お問い合わせはメールかお電話で!お気軽にご相談ください。